
今回は、何気なく耳に入った折坂悠太の音楽に衝撃を受けた勢いそのまま、ライブ感満載でお届けしたいと思います。
物憂げな午後を切り裂いたBGM
買い物に行こうか、行くまいか。
「明日の朝のヨーグルトがないが、タスク1つだけのために出かけてしまうと、ガソリンのムダだ。
行ったら行ったで余計なものを買ってしまうし、節約から遠ざかる。
やはり、今日は行かざるべきか…」
リビングで節約の葛藤をぶつぶつとつぶやいていた、そんな昼下がり。
その物憂げな雰囲気をぶち破るメロディーが、テレビから突如として流れてきた。
NHK「みんなのうた」。
タイトルは「やまんばマンボ」。2025年4〜5月の新曲だ。
歌うのは、折坂悠太。
子ども向け番組だとたかをくくってボーっと見ていた意識が、一瞬で釘づけになった。
子どもが夢中になる、“クセツヨ”フレーズ
そういえば最近、息子がやたらと謎のフレーズを歌っていた。

やまんばマンボ♪やまんばマンボ♪
冒頭は、おどろおどろしげな語りから始まり、ユーモラスな絵とアニメーションが軽快に進む。

この絵、絵本で見たことあるよ
調べてみると、絵は絵本作家の長谷川義史氏。
『おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん』などの作家だ。
旅人がやまんばと出会って慌てて逃げ惑う様が、まるで踊っているように見え、
やまんばが「そりゃマンボじゃないか?」「シャル・ウィ・ダンス?」…と言い出す。
まさかの展開だ。
謎の世界観と、一度聴いたら離れない中毒フレーズ。
気づけば、テレビの前に吸い寄せられていた。
初めて聴いた衝撃
番組終了後、私は「折坂悠太ってこんなに凄い才能だったのか!」と声を上げていた。
「ど、どしたの…」と困惑する妻に対し、私は力説する。
「折坂悠太はここ数年、音楽好きの界隈で高く評価されているシンガーソングライター。
アルバム『平成』も、『ミュージック・マガジン』っていう雑誌の年間ランキング1位(※2018年の日本のロック部門)を獲得していたし、かなり気になってはいた。
でも、テレビに出るタイプじゃないから、触れるきっかけがなかったんだよ!」
要するに、ずっと気になりつつも出会う機会がなかったのだ。
それがまさかEテレで実現するとは思いもしなかった。
民謡とマンボの融合 – その独創性を分析する
聴いてみて、もの凄い才能に驚愕した。
日本の民謡っぽさと、タイトルどおりの『マンボ』が見事に融合している。
マンボは、1930年代後半にキューバで生まれた、リズミカルで情熱的なダンス音楽だ。
力強いパーカッションのリズムと、サックスやトランペットなどの管楽器が特徴で、聴いていると自然と体が動き出すような陽気さがある。
日本の民謡っぽさは、日本で生まれ育ったら自然に身につく節回しや発声なのかもしれないけれど、マンボの部分は、Kenny dorhamの『Afro-Cuban』やsabuの『palo congo』を思い出した。
▼アフロ・キューバンとジャズの濃密な熱気を感じる名盤▼
「2人ともジャズ界隈で、アフロ・キューバン・ミュージックをやっている人なんだけどね。
そのニュアンスと、日本の民謡を結びつけるなんて!この奥深さが分かる?」
妻は即座に答えた。「分からん。私にも分かるように説明して」
細野晴臣から折坂悠太へ – 受け継がれる音楽の遺伝子
私は「よしきた!」と膝を叩いた。
「……」
妻の醒めた視線をスルーしつつ、以前話したことのある「はっぴいえんど」を思い出すよう促した。
「前に、大瀧詠一の話をしたけど、彼と一緒に『はっぴいえんど』をやっていたのが細野晴臣なんだ。
彼が『はっぴいえんど』を解散して、YMOを結成するまでの作品群を彷彿とさせるんだよね」
解散して初のアルバム『HOSONO HOUSE』(1973年)はフォーク・カントリーのアメリカンなサウンドがベースだったが、次作からは音楽性が一気に広がった。
『トロピカル・ダンディー』(75年)『泰安洋行』(76年)『はらいそ』(78年)の3作は「トロピカル三部作」とも称される。
▼無国籍エキゾチック・サウンドの金字塔▼
この時期に細野が目指したのが、ガンボや沖縄音楽、ファンクなど、世界の多様な音楽の要素をごった煮にした「チャンキー・サウンド」だ。
「以前の話では、大瀧詠一が1970年代半ばに黒人音楽のリズムを自分のものにしたレジェンドだと紹介したけど、その大瀧に並び立つ日本ロック界の巨人が細野晴臣なわけよ。
『ワールド・ミュージック』(という言い方は最近はあまりしないけど)の先駆者とも言えるのかな。
折坂悠太は細野晴臣の遺伝子を受け継ぐものなのじゃないかね?
折坂悠太のことをもっともっと知りたくなったよ!」
さらに彼のルーツを調べると、幼少期に父親の転勤でロシアやイランに住んでいた経験があるという。
細野にも通じる『チャンキー』な感覚は海外経験も反映されているのかもしれない、と合点がいった。
最後に:折坂悠太は必聴!
「これは、アルバムをじっくり聴き込むしかない」
直感した私は、すぐさまスマホを調べ始めた。
▼折坂悠太の凄さを知るならまずはコレ!迷わず購入して大正解だった必聴アルバム▼
(※ 「やまんばマンボ」は収録されていません)
後日無事に届き鑑賞。期待を超える名盤に唸った。
子ども向け番組とたかをくくっていたら、本物の音楽に頭を殴られた。
「やまんばマンボ」に仕掛けられた唯一無二のグルーヴと熱量は、一度耳にしたら抜け出せない。




